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「被災の経験を悲劇で終わらせないために」

2011年3月11日に起きた東日本大震災、それにつづく津波と原発事故は、日本の社会・政治・経済にとって歴史的な転換点となりました。しかしそれ以上に、わたしたちにとって共通の記憶であることを忘れてはなりません。

現代において、自然災害がこれほど大規模な被害をもたらすとは、安全対策や被害軽減策が自然の力の前にこんなに無力であるとは、多くの人が思ってもみなかったことでしょう。今なお、風評被害から、地域コミュニティの消失、エネルギー供給制約による産業・生活に至るまで、その影響はわたしたちの生活のすべてに及んでいます。

震災から15ヶ月が過ぎようとしています。しかし、震災からの復興はまだ、ようやく始まったばかりです。むしろ「これから」が復興の成否を決めるといっても言い過ぎではないでしょう。「復興アリーナ」は、これから行われようとする回復・復興に、情報と言論によって参加していく試みとなります。

情報や言論よりも直接的な行動を ―― と考えられる方もおられるでしょう。たしかに復興は少しでも早いほうが良い、その意味では「考えてから走る」ような問題ではないのかもしれません。しかし、「考えずに走る」ことで解決する問題でもありません。わたしたちは「考えながら走」らなければならないのです。

これまで蓄えられてきた人類の自然科学、人文・社会科学における英知を生かしながら、現実に立ち向かっていくために、可能な限り経験、知識、情報を集め、整理・分析し、伝えていくことが必要になります。

復興アリーナのプロジェクトは、震災被害地域の住民、地元そして全国のジャーナリストたちが体験し、見聞きした知見を整理し、記録として残すことから始まります。また、震災発生後の各時点において、メディアや、政治家が、そして、論者・専門家が、災害の影響やリスクについてどのように発言したのかを保存することで、「3.11とは何だったのか」「巨大なリスクの顕在に対し、人はどのように反応するか」をようやく知ることができるようになるでしょう。

人の記憶、そして印象は、日々変化します。3.11の経験を風化させないこと、メディア、政治家、論者・専門家の発言を知ることによって、起こってほしくはないことですが、これから起こるかもしれない大規模災害・大事件に備えることができればと考えます。

3.11から学び取れる教訓を全国・全世界に向けて発信することに加え、様々な分野の専門家の知恵を集結し、復興と発展へ向けた提言を集積することもわたしたちの目標です。直接的な被害を受けられた方でも、場所によって受け止め方・必要なこと・もの・考え方は大きく異なります。間接的な被害地域まで含めると、必要とされる事柄はさらに複雑で多様です。自分、そして、自分の街が何を必要としているのかを、一番知っているのは、一人ひとりの当事者たちです。

ですから、復興アリーナが統一的な政策提言をまとめ、それを提案することはしません。わたしたちが提供するのはあくまでも、知と情報、そして経験の見本市です。復興アリーナで示される様々な提言のうち、それぞれの個人にとって有意義なものを見つけていただけたら、復興アリーナを運営するものとしてこれほど嬉しいことはありません。

3.11を風化させないための情報の集積、3.11の経験を生かすための記録の整理と分析、そして3.11から立ち上がるためのアイディアの提示 ―― 復興アリーナが目指すのは、震災地域だけでなく日本全国の当事者がより動きやすくなるためのきっかけであり、便利な参考書になることだと考えています。

「復興アリーナ」プロジェクトリーダー 飯田泰之